
筋トレは1回目よりも3回目が楽になる理由
筋トレをしていると、こんな不思議な体験をしたことはありませんか?
「1回目のセットはめちゃくちゃ重く感じたのに、3回目の方が重量を増やしても意外と楽にできた」——。
これ、ただの気のせいではなく、ちゃんと体の仕組みに理由があります。
神経系が目覚める「ウォームアップ効果」
筋トレは筋肉を鍛えるもの、と思われがちですが、実際には 神経のトレーニング でもあります。
最初のセットではまだ脳から筋肉への指令がスムーズに届かず、筋肉が十分に力を発揮できません。
ところが2〜3セット目になると、神経がどんどん活性化して より多くの筋繊維を動員できるように なります。
これを「ポストアクティベーション・ポテンシエーション(PAP)」と呼び、結果として「同じ重量でも軽く感じる」状態になるのです。
血流が増えてエネルギー供給がスムーズに
1セット目の時点では、筋肉への血流がまだ十分ではありません。
しかし、動かし続けることで血管が拡張し、酸素や栄養が一気に流れ込みます。
このとき大きなポイントになるのが ATP(アデノシン三リン酸) というエネルギー分子です。筋肉はこのATPを直接燃料として動いており、その再生産の仕組みが時間経過とともに切り替わります。
ATPの3つのエネルギー供給システム
筋肉が動くとき、ATPは以下の3段階で供給されます。
1. ATP-CP系(瞬発系:0〜10秒)
筋肉に貯蔵されたATPとクレアチンリン酸を使って、一気に爆発的な力を出す。
→ ただしすぐに枯渇する。
2. 解糖系(無酸素系:10秒〜数分)
筋内のグリコーゲンを分解してATPを作る。乳酸が発生するが、これも燃料として再利用できる。
→ 「焼けつく感じ」が出てくるのはこのフェーズ。
3. 有酸素系(数分以降)
酸素を使って脂肪や糖を燃やし、効率よくATPを産生。持久力運動ではここがメインになる。
1セット目はまだATP-CP系がメインで、体が“本格稼働モード”に入っていません。
しかし2〜3セット目になると解糖系や有酸素系が滑らかに回り出し、ATP産生が安定してくるため、むしろ「楽に動ける」と感じやすくなるのです。
ホルモンと心理的効果もプラス
筋トレを重ねるとアドレナリンが分泌されて覚醒度が上がり、「やれるぞ」という感覚も強まります。
さらに「1回目で重いと感じたけど大丈夫だった」という成功体験が、心理的ハードルを下げる要因にもなります。
まとめ
筋トレで「後の方が楽になる」のは…
・神経系が活性化して筋繊維をより多く動員できる
・血流が増えてエネルギー供給(ATP産生)が効率化する
・ATPの供給システムが切り替わって安定する
・ホルモン分泌や心理的慣れが加わる
つまり、体が「ウォームアップ完了!」となったタイミングで、エネルギーも神経もフル稼働するからなんです。
👉 だから筋トレは1セット目より2〜3セット目の方がパフォーマンスが上がる。
「最初の重さにビビってやめちゃう」のではなく、少し続けた先に体が目覚める瞬間があると知っておくとトレーニングが楽しくなりますよ。